「クレームは患者からの贈り物」
と言われますが、皆さんはいかがですか。少し古い本ですが「苦情という名の贈り物」という本があります。(生産性出版2006年)この本は苦情の概念を180度変えた本として、すでに出版されてから15年経過していますが、ロングセラーの本です。
それ以前の苦情の概念は、面倒なもの、怖いもの、無理を言われる等マイナスのイメージでしかとられなかったのですが、この本では、苦情は顧客の改善を求める声であり、真摯に対応することによって顧客満足度が向上し、顧客とのパートナーシップを構築することができるということについて実例を交えて紹介されています。
嫌なクレームが贈り物になるのか
理由は以下の3点を思います。
① 自分たちの気付かなかったことを気付かせてくれる。
② 小さなうちに解決することにより、大きな事故の発生を防ぐ。
③ 顧客の不満を聴き、真摯に対応することにより、顧客がファンになってくれ、良い評判を流してくれる
①自分たちの気付かなかったことを気付かせてくれる
クレームを受けたい人はいません。しかし、多くの人がその対象になっています。自分たちの業務の不備を指摘し気付かせてくれるのがクレームなのです。ある調査によれば、クレームを口に出して言う人は、同じように感じている人の4%しかいないそうです。
②ハインリッヒの法則を知る
小さなうちに解決することにより、大きな事故の発生を防ぐことができます。
皆さんは医療安全の立場から、ずてにハインリッヒの法則はご存知でしょう。
1つの重大事故の陰には、同じような30の小さな事故があり、その下に300ものヒヤリハットが隠れているという法則です。顧客の不平、不満のうちに対応することによって大きな事故やそれに伴う損害も防止できるのです。
皆さんの現場では、患者さんや職員からの300の事例を収集する仕組みを持っていますか。
③顧客の不満を聴き、真摯に対応することにより、顧客がファンになってくれ、良い評判を流してくれる。
口コミは非常に強力な追い風になる反面、逆風になります。特に地域密着型の病院は、地域の方に支持されなければなりません。悪い評判はあっという間に拡大します。そしてその悪い噂は、尾ひれがついて大きくなり拡散されます。逆に真摯に対応することにより、その人は単なる患者ではなく、ファンになってくれます。その人たちは悪口を言いふらす人ほど派手ではありません。しかし、確実に病院に根が生えた患者として必ず、味方になってくれ、機会あるごとに病院を推薦してくれます。そのような地域住民を確実に増やすことが、今後の病院経営のベースになっていきます。
以上が「クレームはお客様からの贈り物」と言われている理由です。
と、言われてもやっぱりクレームを受けるのは嫌ですよね。無くなればよいと思っていませんか?
はっきりと言います。
あなたが、そしてあなたの所属している組織が、良くなっていこう、改善していこうと努力していけばいくほど、苦情やクレームもついてきます。なぜならば患者や利用者の期待がそれにつれて大きくなっていくからです。もっと良くなってほしいと思うからです。逆に言えば、苦情やクレームの無い組織は、顧客から良くなってほしいと思われていないのです。
患者の期待と、病院がそれにこたえようとする気持ちが一致した時病院は良い方向に成長していくのです。そうであれば、クレームとうまく付き合っていく方法を考えていく方が現実的で前向きだと思います。
次回はもう少しクレームの性格について考えましょう。
「うちにはクレームはないよ」と言っている院長!それは患者に期待されていない危険な兆候かもしれませんよ!