前回は患者さんに伝わる説明に必要な共感について、
「患者さんの人としての尊厳を大切にするための基本的なポイント」
を解説してきました。
今回は疾病による痛みや体調不良を抱えた患者さんだからこそ、
気をつけたいポイントを解説していきます。
ここでも鍵になるのは患者さんへ共感を表すことになります。
「病院スタッフとのコミュニケーションは問題ないのに、
患者さん相手だとうまくいかない」と感じている方や
「患者さんに伝わる説明に必要なテクニックを教えて欲しい」
と実践方法を知りたい方も、ぜひ最後までご覧ください。
突然ですが、来院した患者さんが診察室に入ってきた際に、
まず病院スタッフがやることはいったい何でしょうか?
いきなり「あなたの病名はこちらになります」と診断したり
「さっそく治療をはじめましょう」といきなり治療を進めたりしませんよね。
まずは「今日はどうしましたか?」と
患者さんの話を聞くことからスタートするのではないでしょうか。
患者さんに会話のバトンを渡し、
患者さんの話を聞いて状態を把握してから具体的な治療に入っていくはずです。
そこで、患者さんの話に共感を表すことができると、
病院側に大きなメリットがもたらされます。
その後の診察がスムーズになるだけでなく、
こちらからの説明が患者さんに伝わるようになるのです。
なぜなら、
共感を表すことで「あなたのことをちゃんと見ていますよ」と
患者さんに伝えられるからです。
人としての尊厳を大切にする姿勢を表すことで、
患者さんに信頼感や安心感を持ってもらえるのです。
それでは、共感の具体的な方法を3つ確認していきましょう。
共感は、アクティブリスニングとも呼ばれるコミュニケーション技術の1つです。
ポイントを押さえれば、誰でも患者さんに伝わる説明ができるようになりますよ。
相手を批判せずに素直な気持ちで聞く
共感を患者さんに伝えるためには、
まず相手を批判せずに無条件に受け入れる姿勢が重要です。
もしも自分が一生懸命に話をしているのに、
誰かに批判されたり何度も発言を遮られたりしたら、
話す気持ちがなくなってしまいますよね。
それと同様に、患者さんの話を無条件に受け入れずに批判してしまうと、
患者さんも「もう話さなくていいや」と口を閉ざしてしまいます。
自分の話が患者さんに伝わらなくなるだけでなく、
相手の方が萎縮してしまった結果、必要な情報が聞き取れなくなるおそれもあります。
共感の最初のポイントとして
「患者さんの話を批判せずに受け入れる」という心構えを持っておきましょう。
話し手と聞き手の感情が一致すると、
患者さんの満足度が高まります。
満足度が高まると
「自分の話をちゃんと聞いてくれたから、次は相手の話もきちんと聞こう」
となり、説明が伝わりやすくなるのです。
患者さんの感情を読み取って反応を返すコツをご紹介します。
- 話にあわせてうなづいたり相づちを打つ
- 「それでどうなりましたか?」「なるほど!」などの短い言葉をやや大げさに伝える
- アイコンタクトをする
- 姿勢を前傾にする
患者さんにネガティブな印象をあたえてしまうのは
以下の動作や行為です。できるだけ控えましょう。
- 話の邪魔になるような動作(机と指でたたく、顔を何度もさわるなど)
- 批判したり評価を下す
- 話の腰を折るまたは話を途中で遮る
患者さんの中には「説明が苦手」という方もいます。
自分の症状についてうまく話せず患者さんが困っていたら、
言いたいことを要約してあげたり言い換えたりしてあげましょう。
「つまり…こういうことですね」「それは…ということですか?」などと
患者さんに助け船を出してあげるのです。
患者さんの思いをうまく引き出せて「それが言いたかった」
と患者さんが喜んでくれれば、病院スタッフの話す番に、
患者さんが積極的に耳を傾けてくれますよ。
ただし、患者さんが自分の口で説明しようと考えているときは、
じっと待ってあげてください。
沈黙が続くと気まずくなり口を出したくなりますが、
じっと待ってあげる方が結果的に患者さんの満足度は向上します。
患者さんの立場や気持ちに配慮した
コミュニケーションのポイントを解説してきましたが、
いかがでしたでしょうか。
次回は、患者さんに伝わる説明の仕上げとして、
患者さんにとってはいけない態度をご紹介していきます。
ぜひ次回もご覧ください。
※第一印象が良くなるナースのマナー(濱川博昭/島川久美子共著)