前回の
「病院スタッフが身につけたい患者さんとご家族へのクッション言葉」では、
患者さんやご家族からの印象を悪くせずに用件を伝える方法として、
クッション言葉の効果や具体例をご紹介しました。
その応用編として本記事では、
患者さんやご家族を喜ばせる話し方や
マイナスの意味をプラスに変える話法を解説します。
ぜひ本記事も参考にしていただき、
患者さんやご家族はもちろん、
上司や同僚からも頼りにされる存在になりましょう。
適切な診察や検査のために、
患者さんに指示を出すのは病院スタッフの役割ですが、
命令口調はときに相手を不快にさせてしまいます。
なぜなら患者さんの中には、
人から指示されることに慣れていない方や
疾病による痛みなどで気が立っている方もいるからです。
そこで、「問診表に記入してください」
「体重計に移動してください」といった命令口調を、
相手が受け取りやすいように変化させてみましょう。
午前中の外来での看護師さんはとても多忙ですので、
つい事務的に患者さんにこのような言葉掛けをしていると
患者さんは不快な気持ちになります。
引用元:参考元:第一印象が良くなるナースのマナー|濱川博昭 島川久美子共著
たとえば「問診表に記入してください」を
「記入していただけますか」に変えてみます。
「体重計に移動してください」は「体重に移動していただけますか」
といったようにお願いの形に変化させると、
言葉の響きが柔らかくなります。
すると、それを聞いた患者さんも
「はい、わかりました」とすんなり受け取ってくれるのです。
人が情報を脳に取り入れるとき、
先にいわれた短所よりも後から聞いた長所の方が
強く脳に残ると考えられています。
これは「マイナス→プラス話法」と呼ばれるものです。
ものごとを評する言葉を反対に入れ替えただけで、
聞いた人の印象が大きく変わります。
引用元:参考元:第一印象が良くなるナースのマナー|濱川博昭 島川久美子共著
「診察が丁寧な院長がいる」と評判の病院があったと仮定しましょう。
そして、まだその病院を利用したことがない人に対して、
以下のように伝えたとします。
「あの病院の院長は、診察が丁寧だが不愛想だ」。
このように聞くと、ほとんどの人はネガティブな
印象を持ってしまうでしょう。
以下のように伝えるとどうでしょうか。
「あの病院の院長は、不愛想だが診察が丁寧だ」。
いかがでしょうか。
単純に順番を入れ替えただけですが、
これを聞いたほとんどの人は先ほどよりも
ポジティブな印象を持つのではないでしょうか。
「不愛想なのは性格だから仕方がない、
それよりも診察が丁寧な方がいいじゃないか」
「不愛想でもちゃんと診察してもらえるなら通ってみたい」
と考える人が出てきてもおかしくありません。
この技術は看護現場でも生かすことができます。
たとえば、病院の食事が苦手な患者さんへ
「こちらのお食事の見かけはよくないですが、味はおいしいですよ」
と伝えて食事を勧めることもできます。
また、ご家族から病院スタッフへのネガティブな批判があったとしても、
「スタッフの〇〇さんは伝え方が厳しいときもありますが、
患者さんのことを第一に考えていますよ」と伝えて、
スタッフ本来の魅力を認識してもらうこともできるのです。
おわりに
話し言葉は、使い方を意識するだけで変化させることができます。
逆にいえば変えようと意識しない限り変わらないのです。
日常的に意識することは簡単ではないかもしれませんが、
患者さんやご家族の機嫌を損ねずにこちらの意図を伝えられたら、
病院スタッフにとっても大きなメリットがありますよね。
ぜひ本記事の中から取り組めそうな技術を見つけて、
明日からでもはじめてみてください。