カスハラ・ペイハラ

カスタマーハラスメント対策

最近のカスタマーハラスメント議論に思う

はじめに

ここ1年、『カスタマーハラスメント』に対する世間の関心は高まっています。2025年4月には、東京都カスタマーハラスメント禁止条例が施行されることが決まり、多くの企業・自治体が「カスハラ対策」に力を入れておられます。

かく言う私共にも、多くの問い合わせや研修のご依頼を頂き大変感謝するとともに、私たちに寄せられる期待の大きさに身を引きしめなければと、社内で議論を重ねています。

関係者で「カスハラ対策」について議論を進めていくうちに、「サービス提供者」と「受給者」の関係がどのようになっていくのだろうかという疑問が湧き出し

私たちが最初に始めた「クレーム対応」「顧客満足」との関係について、もう一度議論しようという事になりました。

CX(Customer Experience)3.0について

2020年、私が書いたメルマガで「CX3.0」について、以下のように引用している箇所があります。

『実際「顧客体験の教科書」の「日本の読者の皆様へ」の中で、著者のグッドマン氏は「本書は、1970年代半ばから今日に至るまでの、顧客サービスの成功と失敗を振り返ったうえで(中略)サービスマネジメントの「あるべき姿」をまとめたものである。企業はかつて、消費者の苦情対応に忠実に取り組んできたが、対応するだけでは彼らを真に満足させ、ロイヤルカスタマーを作り上げるには至らなかった」とする。

さらに、「これからはまず顧客体験の全体像を認識し、企業として戦略的に取り組む方向性を見定めたうえでサービスを考えるべきである」としている。

しかし、これはすでに言われていたことで全く目新しいことではないと思います。むしろ佐藤友恭先生や、ヤン・カールソン氏は実践してきたことだと思います。

つまり、「企業は患者を満足させるために努力して、忠実に顧客からのクレームに対応してきたが、それだけではロイヤルカスタマーを創ることはできなかった」と言っています。』

顧客と企業の関係性について

顧客と企業の関係は、歴史的にみても絶えず変化しています。「物を売ってもらって嬉しい関係」から、「買うためには付加サービスを要求する時代」に変化してきました。それは一貫して、顧客のニーズを満足させることに、企業が一方的に努力してきた事に関連しているのだと感じます。

京都大学の山内裕先生が、「闘争としてのサービス」という本で、それはちょっと違うんじゃないかと疑問を投げかけられました。「良いサービスを受けるためには、顧客もそれなりに努力しなければならない」と、高級鮨屋や料亭の例を挙げておられました。

この『カスタマーハラスメント』という問題が、両者の新たな関係を構築する一つのきっかけになるのではないだろうか、と考えています。

今、私共と親しい医療機関が「2040年ビジョン」を作成されています。とても野心的な試みです。この取り組みが、前述したグッドマン氏の「顧客体験の全体像を認識し、企業として戦略的に取り組む方向性を見定めたうえで、サービスを考えるべき」という事につながるのではないかと期待しています。

患者との新しい関係を、皆さんと一緒に創造できれば良いなと考えました。

濱川 博招

略歴
経営コンサルティング会社ウィ・キャン代表。顧客満足向上のコンサルティングのスペシャリストとして多くのサービス業、医療機関で実績を上げている。医療機関においては、実際の医療現場で発生した膨大な数にのぼる事例研究を通して、リスク回避のためのコミュニケーション等現場に即した研修を実施
著書「病院のクレーム対応マニュアル」「医師・看護師が変える院内コミュニケーション」「毎日が輝くナースのマナー―決定版!患者接遇完璧マニュアル」「できる看護主任・リーダーのコーチング術」人材派遣会社「儲け」のルール」「病院のクレーム 対応の基本」共著等(パル出版)

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