以前は、あるひとつの企業には、同じような教育レベルと、
同じような考え方を持った人が就職して、定年まで働き続ける。
そんな雇用形態が可能であったかもしれません。
しかし、現在は、企業内でも今まででは考えられなかったほど
多様な立場の人たちが働いています。
雇用形態からいっても、正社員、契約社員、派遣社員。
さらには、外国人労働者といった具合に、経歴・能力・報酬さらには国籍まで違うといった
様々な日とが集まっています。
その結果、かつては職員間に存在していた「あ・うん」の呼吸が通用しなくなっています。
価値観のズレとコミュニケーションの隔絶
医療機関のスタッフは、一般の企業と違い、
入職する前には必ず専門分野の学校を卒業しています。
一般企業と比べれば、ある程度共通の価値観を持っていると言えるかもしれません。
しかし、医療機関においても、企業と同様の問題が起こるようになりました。
特に組織が大きくなればなるほど、その傾向は顕著です。
世代、雇用形態の違いなど、さまざまなズレに起因するコミュニケーションの隔絶という問題が出てきます。
この点については、大規模な病院だけでなく、
クリニックにおいても世代間のギャップでコミュニケーションが上手く取れないなどの経験はありませんか。
コミュニケーション・ツールとしての「マニュアル」の意味
たとえば、院長が「医療従事者としてふさわしい服装をしましょう」というスローガンを立てたとしましょう。
それだけですべての職員が同じ意識を持つことがあり得るでしょうか。
まず、医師と看護師とは意識が違います。
看護師は制服という白衣を着ていますが、髪の毛の長さや色、その他細部までこだわっている職種です。
看護師という職種に対して、誇りをもって取り組むためは、
身だしなみはとても大切だと研修時によく耳にします。
しかし、他の職種の職員は、看護師同様の意識であると言えるでしょうか。
ましてや、近い将来、外国人の看護師や介護士を受け入れる病院は増加するでしょう。
彼ら、彼女らの価値観は、私たちとまったく違うと考えてください。
そのためにも、「コミュニケーション・ツール」として、マニュアルの整備が必要になります。
現場では、「マニュアルなんて」といった言葉を聞きますが、
多種多様な人々がひとつの現場で働かなければならない以上、
病院の理念と患者さんに対する共通した取り組みを実現させるツールとしての役割を果たすことができます。
特に、組織が大きくなって整えのではなかなか浸透しません。
小さな規模のうちに、マニュアルを作成することで、
経営者や院長が考えている病院の理念に基づく行動を実現させることが可能となります。
少し、手間がかかりますが整理して文書化し、
可視化することで職員の意識が同じ方向で働ける職場づくりができます。
こんなはずじゃなかったと、折角採用した人材の離職防止にも役立てることができます。