カスハラ・ペイハラ

カスタマーハラスメント対策

東京都カスタマーハラスメント防止条例仮称についての考察

2024年7月に東京都産業労働局から 「東京都カスタマーハラスメント防止条例<仮称>」について基本的な考え方が出されましたので、こちらについてご紹介したいと思います。

はじめに

本年7月に、東京都産業労働局から表題の基本的な考え方についての通達が出ました。 既に読まれている方もいらっしゃると思いますが、基本的な内容についてお知らせします。

1.策定の趣旨

① 誰もが等しく豊かな消費生活を営み、働くすべての人が持てる力を存分に発揮し、事業者が事業活動を円滑に継続する社会を作り上げるために、 カスタマーハラスメント(以下カスハラ)に対して社会全体で対応しなければならない。

② その上で、顧客等の声は業務や商品サービスの開発につながるということを認めつつ、 誰もがカスハラの加害者にも被害者にもなりうる立場であるので、お互いが尊重し合いカスハラのない公正で持続可能な社会を目指していく。 というのが本条例の趣旨です。

2.言葉の定義

今まで曖昧であったカスハラの定義が明確になったことは、私たちが院内のマニュアルや患者家族に対して「カスハラ行為を禁止する」ことを通知するには、 非常に有効であると考えます。

①「カスタマーハラスメント」

顧客等から就業者に対する、著しい迷惑行為であり、就業環境を害するもの

②「著しい迷惑行為」

暴行、脅迫、その他違法な行為又は正当な理由がない過度な要求、暴言などの不当な行為と定義し、「著しい迷惑行為」についての具体例も挙げています。

私がこの条例案で注目するのは、顧客等による苦情や意見、要望は、業務の改善や新たな商品サービスの開発につながるということを認めつつ、 カスハラ行為は認めないとしていることです。つまり事業者は、顧客等の声を真摯に受け止めて活動しなければならないのです。 特に、人と人とのコミュニケーションで成り立っている業界では、サービス提供者自身がサービスの核であることを自覚し業務にあたることを前提に、この条例があると考えます。

その上で、本条例の精神を理解・実行しなければならないと、過度に反応し、新たな問題が発生するような気がします。 次回からは、具体的に「取り組まなければならないこと」について考察します。

濱川 博招

略歴
経営コンサルティング会社ウィ・キャン代表。顧客満足向上のコンサルティングのスペシャリストとして多くのサービス業、医療機関で実績を上げている。医療機関においては、実際の医療現場で発生した膨大な数にのぼる事例研究を通して、リスク回避のためのコミュニケーション等現場に即した研修を実施
著書「病院のクレーム対応マニュアル」「医師・看護師が変える院内コミュニケーション」「毎日が輝くナースのマナー―決定版!患者接遇完璧マニュアル」「できる看護主任・リーダーのコーチング術」人材派遣会社「儲け」のルール」「病院のクレーム 対応の基本」共著等(パル出版)

貴院の経営課題を共に解決!