看護リーダーに求められるファシリテーションスキル

「リーダーは、答えをすべて持っている」と、スタッフは思っています。しかし、看護の現場で起こる様々なことに対応できる知恵や能力は、リーダーよりスタッフの方が持っているかもしれません。

コーチングとファシリテーション

スタッフからのアイデアや考えをみんなで話し合いながら聞くと、色々なヒントがあります。そういう場を設定できる役割を担うのがファシリテーターです。

このファシリテーションに必要な「ファシリテーションスキル」を習得すると、上手くチームを運営することも可能です。

問題解決をするためには、個人を対象とする場合とチームを対象とする場合があります。どちらも「自律的な問題解決を促す」という意味では、コーチングもファシリテーションも共通しています。

コーチングは、個人を対象として「自分の考えや行動を深く振り返ることで本人の気づきを促すもの」で、自律的な問題解決ができます。

ファシリテーションは、「スタッフがお互いの相互作用で得られる気づきを促すもの」ですので、組織として問題解決ができます。

 

 

ファシリテーションの4つのスキル

① 場のデザイン

会議や打ち合わせは

・何のためにするのか

・何を決定するのか

・参加者は誰か

・どのようなプロセスで進められるのか

(アジェンダと言われるもの)という情報を共有します。また、参加者メンバーの意見の出やすい雰囲気づくりをするため、事前準備を行います。その準備として、話し合いを進める時のグランドルールを決めます。

(例)「挙手してから発言する」というルール

・合意形成の方法

② 対人関係のスキル

傾聴や質問を通じて、参加者全員が意見を言いやすい環境をつくります。話し合いの場では、ブレインストーミングを実施します。

ブレインストーミングの最大の特徴は、「出てきたアイデアを絶対に否定しない」ことです。意見を言う場では、たまに相手の意見について否定的になってしまうことがあります。ブレインストーミングではこの点を回避することで、言いやすい話し合いの場所になります。

③ 構造化のスキル

出た意見やアイデアの内容を、整理しながら共有します。例えば、似たアイデアをグループ化したり、対立するアイデアの論点整理をしたりしながら、議論をわかりやすく整理します。

④ 合意形成のスキル

構造化の段階では、全員の意見が一致していることはまず考えられません。それぞれの参加者にとって、時には意見が対立している場合もあります。そこで、みんなが納得できるような合意形成を図ります。目標とするゴールに向かって、できれば決定し、実行に移せるようにまとめていきます。

よく利用されるのは、「ペイオフマトリックス」を使って、アイデアの選択をします。

ペイオフマトリックスとは、「効果」と「実現性(実行コスト)」の2つの軸で構成されるマトリックスを使って、アイデアの選択をするためのフレームワークです。

チーム内で何かを改善する場合、リーダーとしてファシリテーションのスキルを使ってチーム内でミーティングし、改善のアイデアを実施に移すために有効なツールです。

島川 久美子

略歴
立教大学大学院卒業MBA取得。人材派遣会社立ち上げ、PC等教育フランチャイズ本部で人材育成に携わる。2002年4月株式会社ウィ・キャン(人材ビジネス・人材開発)、取締役に就任。1998年から、企業の立場で人材育成から病院での患者応対に関するコンサルティングを実施する。企業および医療機関における人材育成に関する企画・研修を実施。

著書
「医師・看護師が変える院内コミュニケーション」「毎日が輝くナースのマナー―決定版!患者接遇完璧マニュアル」できる看護主任・リーダーのコーチング術」共著(パル出版)他
「介護現場のクレーム対応の基本がわかる本 (New Health Care Management)」
「医療と企業経営 第6章」共著(学文社)
「ビジネスクリエーターと人材開発」共著(創成社)他