管理者の中には、感情の起伏が激しく、スタッフを大きな声で叱ったり、時には怒鳴る人がいます。 仕事に熱心で、情熱を傾けている人ほど、この傾向はあるようです。コミュニケーションを円滑にするためには、まず、自分を冷静に保つことが必要です。 つまり、あなた自身の感情のコントロールが必須となります。 しかし、一般的に「コーチングの研修」を受講すると、感情をあらわにせず、冷静にスタッフと対応するように、と教えられます。感情を「コントロールすること」は、感情を「抑えること」とイコールではありません。 感情的になることは悪いことなのか感情を無理に我慢して話をしていると、あなたの言いたいことが相手にきちんと受け取られない可能性があります。皮肉程度にしか理解させていなかったり、変な誤解をされる場合があります。 業務を行う上で、患者さんの安全をおびやかす行為には、どうしても大きな声で叱ることはあるでしょう。行為ではなく、自分の感情のままに「怒る」という行為になっている場合も考えられます。 「叱る」と「怒る」は、違った意味を持っているということは皆さん、ご存じかと思います。しかし、医療の現場では、管理者の皆さんは「危ないことがなぜわからないのか」「どうして、患者さんの立場を考えることができないのか」「今すぐ対応しなければ危ないのだ」と、さまざまな感情が沸き上がり、つい大きな声で「怒る」という行為になってしまいます。 スタッフを注意する場合、あなたの日常の勤務態度が誠実であることが前提になりますが、スタッフの行動が規則に違反している場合や、ダメージを及ぼす可能性が高い場合は、大きな声で注意することを、私個人はお勧めします。 しかし、仕事への熱意も見せず、勤務態度がいい加減だとすると、あなたに大きな声で注意する資格はありません。誰もが「あなたを認めている」ということが大前提です。
|
感情的になることの問題点感情的になることを無理に抑える必要はないと、あえて私はお伝えしますが、感情的になってしまった時は、どのような問題が起きるかはきちんと把握しておくべきだと思います。 ① 冷静な対応が出来なくなる怒りや苦しみといったマイナス感情が絡むと、冷静な判断ができない、理路整然と話すことができなくなる可能性が高くなります。 ② 二次的問題を引き起こす具体的に言えば、上司の怒りが長引けば、職場環境が悪くなります。そのことは、スタッフ同士の人間関係にも悪い影響を与えるでしょう。 ③ 本質的な問題解決ができなくなるあなたが冷静に判断できず、またスタッフも冷静に指示を受けることができない状態ともなれば、お互いに「感情的になられた」という意識だけが残ります。そして、問題の解決は遠のくばかりです。
|
日頃からスタッフをよく観察し、忙しい中では、短い時間でも良いので、頻繁に打ち合わせを行ってください。きっと、管理者の皆さんの仕事に対する真摯な気持ちは伝わるはずです。 |
略歴
立教大学大学院卒業MBA取得。人材派遣会社立ち上げ、PC等教育フランチャイズ本部で人材育成に携わる。2002年4月株式会社ウィ・キャン(人材ビジネス・人材開発)、取締役に就任。1998年から、企業の立場で人材育成から病院での患者応対に関するコンサルティングを実施する。企業および医療機関における人材育成に関する企画・研修を実施。
著書
「医師・看護師が変える院内コミュニケーション」「毎日が輝くナースのマナー―決定版!患者接遇完璧マニュアル」できる看護主任・リーダーのコーチング術」共著(パル出版)他
「介護現場のクレーム対応の基本がわかる本 (New Health Care Management)」
「医療と企業経営 第6章」共著(学文社)
「ビジネスクリエーターと人材開発」共著(創成社)他