カスハラ・ペイハラ

カスタマーハラスメント対策

カスハラ対策を考える③

先月号では、「カスタマーハラスメント」の病院の基準を作りました。その基準に基づいて、職員の対応やフォローはある程度できるようになると思います。

しかし、その基準を患者や家族に知らせなければ、効果はありません。患者・家族に知らせることが「ハラスメント被害を減少させる」第一歩と考えます。

そこで今回は、「ハラスメントの基準を公開する必要性」について考えていきます。

すでにお気づきだと思いますが、ハラスメントの基準は人によって違っています。同じような暴言を受けた場合でも、受けた人によって感じ方が違います。受けた本人の感じ方で違うのですから、ハラスメント行動をする人がわかるはずがありません。

ハラスメントの基準を公開する必要性

最近、カスタマーハラスメントは大きく取り上げられ、「何でもかんでもハラスメント」の様相があります。

この状況は、患者の権利を大きくクローズアップさせ、「患者」を「患者様」と言い換えた時代と、なんだか類似しているように思います。

この時代の功罪は、いろいろとありました。医療従事者の皆さんは、環境の変化に翻弄されながらも「情報公開」や「患者満足度調査による患者満足度の向上」「接遇・応対スキルの向上」等、多くの努力をされてきました。

事実、20年前とは比較にならないほど「患者満足度向上」のための取り組みは向上し、また、医療従事者の皆さんの意識も変わってきました。

一方、患者側は変わったでしょうか?誤解を恐れずに言わせていただくと、残念ながら全く変化していないような気がします。

それどころか、必要以上に医療従事者に依存する患者、間違ったお客様意識による権利意識を持つ患者が顕在化してきたように感じます。そしてその一部の患者が、カスタマーハラスメントという行為にでるのかもしれません。

医療従事者を守る上でも、自院のハラスメントに関する基準をポスター等で公開しておくと良いと思います。

医療従事者と患者の関係性

私がこの仕事に入って、20年以上経過しました。一貫して考えていることは、「患者と医療従事者は決して敵対者ではなく、限りある医療資源を守り、育てていくパートナーである」という事です。

「カスタマーハラスメント対策」等の環境をチャンスに変えて、より高い次元に患者と医療従事者の関係が上がらないかと、ひそかに望んでいます。

以上のようなことを前提に、自分たちの組織として「何が診療を妨げるか?」「どういう行為が職員を悲しませるか?」という事を、具体的に伝えることが必要であると思います。

両者は、良き大人の関係にならなければならないと考えます。

『カスタマーハラスメント』という言葉は、患者・家族にはきつすぎるような気がします。多くの患者さんは、普段は「ちょっと迷惑な行為もあるが普通の患者さん」です。

ただ、その普通の患者さんが、何かをきっかけにハラスメントの加害者に変貌するのです。

次回は、患者・家族にどのように告知するかをお伝えいたします。

濱川 博招

略歴
経営コンサルティング会社ウィ・キャン代表。顧客満足向上のコンサルティングのスペシャリストとして多くのサービス業、医療機関で実績を上げている。医療機関においては、実際の医療現場で発生した膨大な数にのぼる事例研究を通して、リスク回避のためのコミュニケーション等現場に即した研修を実施
著書「病院のクレーム対応マニュアル」「医師・看護師が変える院内コミュニケーション」「毎日が輝くナースのマナー―決定版!患者接遇完璧マニュアル」「できる看護主任・リーダーのコーチング術」人材派遣会社「儲け」のルール」「病院のクレーム 対応の基本」共著等(パル出版)

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