看護師をはじめとする病院スタッフの接遇やマナーで、
忘れてはいけないことが患者さんの目線に立つことです。
心がこもっていない所作や言葉は、
どこか不愛想にうつったり冷たく感じたりしてしまうもの。
日々激務に追われる病院のスタッフだからこそ、
もう一度患者目線に立つことの大切さを確認しておきましょう。
患者目線に立つポイント①相手の立場に立つ
病院を訪れる患者さんは、
病気による体の痛みや不調を抱えています。
そして、病院を利用することに対して、1人1人さまざまな思いを抱えているのです。
病院のスタッフは、患者さんのカルテに目を通しながら、
「自分がこの人の立場だったら、どのような対応をしてもらうと嬉しいだろう?」
と相手の立場に立つようにすると患者さんの目線に立つことができます。
おすすめしたい方法が、
患者さんの家族構成から想像をふくらませることで、相手の立場に立つやり方です。
具体的に説明します。
患者さんが男性の既婚者で、3歳のお子さんがいると仮定しましょう。
その際に、
「もしも自分が結婚していて、患者さんと同じ3歳の子どもいる立場だったら、
病院を利用するときにどんな気持ちになるだろうか?」
と患者さんの家族構成を自分にあてはめてみます。
「病気を早く治して子育てのためにもっと働かなければ…」
と焦りを感じるかもしれませんね。
「仕事と子育ての両立がつらい」と弱気になっている可能性もあるでしょう。
患者さんの家族構成を自分にあてはめると、
さまざまな想像がふくらんでいきます。
すると、今まで「患者の○○さん」だった患者さんが、
「結婚して子育てをしながら、仕事にも取り組んでいる○○さん」へと変化するのです。
その結果、自分の所作や言葉づかいが、
患者の目線に立った所作や言葉づかいへと自然に変化します。
自分の気づかいも、患者さんの心に届きやすくなるのです。
以上が「患者さんの家族構成を一度自分にあてはめてみる」
という病院のスタッフが患者さん目線に立つ方法でした。
ぜひご自分の職場で試してみてください。
患者目線に立つポイント②家族の立場に立つ
患者さんと同じくらい
「できるだけ早く病気が治ってほしい」と考えている人が、
患者さんのご家族です。
ご家族は患者さんの身の回りのケアやサポートができても、
患者さんに変わりになってあげることはできません。
患者さんをすぐ側で支えている分、
患者さんにはない苦しみを感じているご家族も少なくありません。
そこで病院のスタッフが、
患者さんのケアにくわえてご家族の心までサポートできると、
病気で苦しむ方達の大きな助けになります。
前回の相手の立場に立ってみる方法と同じように、今度はご家族の立場に自分をあてはめてみましょう。
一度練習してみましょう。
患者さんが70歳の男性で、
人工透析のために週に3回病院に通っているとします。
そして、10歳年下の妻が毎回車で送り迎えしていると仮定しましょう。
家族の立場に立つ場合、10歳年下の妻を自分にあてはめていきます。
毎週決まった曜日と時間に、
病院まで夫を送り迎えする妻になった自分を想像してみてください。
「人工透析に使う時間があれば、好きな趣味に没頭できるのに…」
と感じるかもしれませんし、
「人工透析が終わったら、このままドライブに連れて行ってあげよう」
と考えるかもしれませんね。
そのように想像してから目の前にいるご家族に一声かけてみます。
その言葉や思いは、ご家族の目線に立った心あふれる言葉になっているでしょう。
たとえ患者のご家族であっても、
ご家族の立場に一度自分をあてはめてみることで、
医療スタッフとして思いやりのある接遇やマナーを持って
対応することが可能になるのです。
患者目線に立つと
「あなた」と「あなたが働く病院」への評価が向上する
病院スタッフが患者さんの目線に立った対応を行うと、
「あの病院は、とても丁寧に対応してくれる」
「患者の気持ちを考えてくれるから安心して頼める」
などとスムーズな治療につながります。
治療がスムーズに進めば、
患者さんやご家族からの病院に対する満足度は大きく向上するでしょう。
病院への評価が高まると、
多くの患者さんが利用してくれるようになり、
そこで働くスタッフの待遇向上も期待できます。
待遇向上により、
スタッフが接遇やマナーにかけるやる気もさらに向上。
病院内に好循環が生まれ、
より地域に愛される病院へと進化していくのです。