事件に巻き込まれ被害にあわれた先生に謹んで哀悼の意を表します。

 

最近医療従事者が殺人の被害者になる悲惨な事件が続いています。私共は先生方、職員の方が安心して働くことのできる職場を目指してDFサービス(ディフェンス・フォース・サービス)をご提供しています。その立場からこんな不幸な事件は防止できなかったのかと考えてみました。

 

100%発生を阻止することはできなくても、別の結論に達する可能性は高いと思います。先日発生した猟銃立てこもり殺人事件について感想を述べます。発生した事件の重大性は加害者に対して同情の余地もありません。私が「最悪の事態を防止できなかったのか?」と疑問に思うのは、加害者は悪い人どころか、普通の市井の人だと感じています。それが、母親の介護と孤独で、追い込まれた結果ではないかと考えます。医師もまた治療に際し、最も良い方法を提案していたと思います。その両者の気持ちの食い違いと、加害者の異常を医師の周りの人たちの中できちんと伝える人がいなかったのではないかと考えています。

 

もちろん今後事実関係が明らかになってくと思いますが、この事件はもちろんですが、先日、大阪で発生したクリニックをターゲットとした「大阪のビル放火殺人事件」では、被害者の医師がこの加害者について相談していたらしい、という報道もありました。

これら2件の事件に共通する点は、事前に兆候が出ているのです。

今回の事件も医師会に、加害者は異常と思われるほど、何度も治療方針に関して相談していた記録が残っていると報道されています。治療方針の意見が食い違う場合は、医療者側と家族側ではすぐには合意できないかもしれません。ましてや1回や2回ではありませんので、もはや信頼関係という点においては関係性が崩壊している可能性も考えられます。その情報についてどのように処理されたのでしょうか?

ひょっとすると担当しているクリニックでは加害者が複数回にわたって医師会に電話をかけているとは知らされず、そこまで気持ちが切羽詰まっていると感じていなかったかもしれません。

もちろん結果論ですが、だれか信頼できる人に相談したのでしょうか?特にクリニックの先生は相談相手もおらず、たとえいたとしても忙しさのあまり、後回しになりきちんと相談する時間すら持てなかったのではないでしょうか?

 

私共のDFS会員の先生方から、「何が発生したわけではないけれどこんな患者がいるのだけれどどう対応すればよいか?事前にアドバイスほしい」と言ったご相談を受けることがよくあります。また、医師会にかかってきた電話に、医師会の職員として対応する場合があります。いろいろな電話がありますが、その中には「〇〇病院の××医師は許せない」といった個人攻撃に関するものも散見されます。ディフェンスフォーサーが電話を受けてその内容が異常であると感じた場合は、当該医療機関に連絡して先生方と一緒に対応策を考えることもあります。

 

ご相談をしていただいた先生からは「相談できるだけでも心強い」「対応の機微がわかる」というお声をいただいています。事前に検討方法を対応するだけでも心に余裕ができるようです。

私たちウィ・キャンのDFSサービスは粘着的な要求をしていたり、少し注意が必要のある患者かもしれないと感じれば「すぐの相談できる」心強い存在になっていくことが目的です。

ニ度とこのような悲惨な事件が起こらないように祈念いたします。

濱川 博招

略歴
経営コンサルティング会社ウィ・キャン代表。顧客満足向上のコンサルティングのスペシャリストとして多くのサービス業、医療機関で実績を上げている。医療機関においては、実際の医療現場で発生した膨大な数にのぼる事例研究を通して、リスク回避のためのコミュニケーション等現場に即した研修を実施
著書「病院のクレーム対応マニュアル」「医師・看護師が変える院内コミュニケーション」「毎日が輝くナースのマナー―決定版!患者接遇完璧マニュアル」「できる看護主任・リーダーのコーチング術」人材派遣会社「儲け」のルール」「病院のクレーム 対応の基本」共著等(パル出版)