「謝罪の記者会見」

以前にも書きましたが「謝罪の記者会見」。

何度も何度も被害者の心を逆なでする謝罪会見が続いていますが。今回もまた同じような謝罪会見がありました。心無い謝罪会見は、被害者にもう一度暴行をしているのと同じであることが理解できているのでしょうか?

今回はちょっと別の視点から考えました。

謝罪会見や、説明会と言われる場所には必ずと言っていいほど「弁護士」という人が立ち会います。おそらく会見や会合の前には綿密に打ち合わせをしているのでしょう。にもかかわらず被害者の方や見ている人の気持ちを逆なでしてしまうのはなぜでしょうか?

 

お決まりのフレーズ

よく私たちが当社のサービスのDFSを説明していると「弁護士がいるので」というお決まりのフレーズが出てきます。

日本人の多くは「弁護士」だけでなく「医師」も何でもできる偉い人と誤解している人がいます。確かにこれらの職業についている人は、偏差値も高く難しい国家試験に合格しています。(かくいう私は遠い昔に司法試験にチャレンジし見事に散りましたが)

 

例えば医師は「病気やけがを治すプロ」であり、決してコミュニケーションや説明のプロではないのです。だから多くの医療従事者の方は、説明能力や患者とのコミュニケーションスキルを上げようと、医師や看護師になった後も勉強している人が多く、私共の研修にも年間1000名を超える方が参加されています。

 

弁護士は何のプロ?

では弁護士は何のプロでしょうか?

交渉のプロという人もいます。確かに依頼人に有利なように交渉するというシーンではそうかもしれません。私が思うに弁護士は「法廷闘争のプロ」もしくは「交渉を有利に進めようとするプロ」ではないのでしょうか?つまり利益が反する者同士が逃走する際に、自分に有利に交渉を進めるためのプロなのです。

謝罪は、利益が反するものに対する行為ではありません。あくまで発生した事実と被害者に対して、真摯に向き合い心から反省しお詫びをする行為なのです。自分の正当性や事情を説明する場ではないのです。

「法廷闘争」を前提とした謝罪会見は、実は謝罪会見のようですがそうではないのです。

 

パフォーマンスとしての謝罪会見

あえて誤解を招くいい方をしますが、弁護士にアドバイスを受けて対策を取った後の謝罪会見は、事件発生から時間が経過し、事実の説明がないままに以下のやり取りが繰り返されます。

「申し訳ございませんでした。原因を追究し今後二度とこのようなことが起こらないようにいたします」

「現在調査中ですのでお答えできません」

 

自分たちの組織がかかわり発生した不幸な出来事に対しては、その不幸な出来事が原因で発生した物的、精神的な損害に対して真摯に謝罪しなければ意味がないだけでなく、被害者やその関係者の傷口に塩を塗る行為になることを忘れないでください。

濱川 博招

略歴
経営コンサルティング会社ウィ・キャン代表。顧客満足向上のコンサルティングのスペシャリストとして多くのサービス業、医療機関で実績を上げている。医療機関においては、実際の医療現場で発生した膨大な数にのぼる事例研究を通して、リスク回避のためのコミュニケーション等現場に即した研修を実施
著書「病院のクレーム対応マニュアル」「医師・看護師が変える院内コミュニケーション」「毎日が輝くナースのマナー―決定版!患者接遇完璧マニュアル」「できる看護主任・リーダーのコーチング術」人材派遣会社「儲け」のルール」「病院のクレーム 対応の基本」共著等(パル出版)